株式投資

四季報の大株主欄に登場する日本トラスティ信託口や日本マスター信託口って何?

信託

 

四季報を読む際、PER・PBRや業績をよく見る方が多いと思いますが、ど真ん中にある株主欄を意識したことがありますか?

大株主をチェックしていると、大手企業の場合必ずと言っていいほど、“日本トラスティ信託口”“日本マスター信託口”など、といった名前が登場しています。

これらは「資産管理信託銀行」と言います。

今回の記事では、四季報の大株主欄に登場する「資産管理信託銀行」についてご紹介します。

 

1.資産管理信託銀行とは

「日本トラスティ・サービス信託銀行」「日本マスタートラスト信託銀行」「資産管理サービス信託銀行」は、四季報の大株主欄に頻繁に登場します。

これらは一般的に、資産管理信託銀行(カストディアン)と言います。

 

資産管理信託銀行(custodian)とは

企業や年金基金(GPIFなど)などの機関投資家から株式や債券などの有価証券を預かり、売買・決済などの管理を代行する金融機関のこと。

 

資産管理信託銀行は、1970年代のアメリカで、機関投資家の高利運用需要の増大や企業年金基金の対外証券投資解禁などを背景に生まれました。

アメリカでは、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(資産規模約2800兆円)やステート・ストリート銀行(同約2460兆円)といった巨大な資産管理信託銀行が誕生しています。

日本では2001年に、政府の規制緩和を受け、メガバンク、信託銀行、生命保険会社などが共同出資資産管理サービス信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行の3行が設立されました。

 

日本の資産管理信託銀行3行
  • 日本トラスティサービス信託銀行…三井住友トラストHD、りそな銀行
  • 日本マスタートラスト信託銀行…三菱UFJ信託銀行、日本生命、明治安田生命、農中信託銀行
  • 資産管理サービス信託銀行…みずほFG、第一生命、朝日生命、明治安田生命、富国生命

 

「日本トラスティ・サービス信託銀行」は三井住友トラストHDが60%超を出資
「日本マスタートラスト信託銀行」は三菱UFJ信託銀行が40%超を出資
「資産管理サービス信託銀行」はみずほFGが過半数を出資

といったように、いずれの信託銀行も預かり資産は数百兆円を超えています。

⇒実質、メガバンク系の信託銀行が中心となって運用!

 

信託銀行の役割

GPIFや日銀のETFの買い入れは一体どのように行っているのでしょうか。

信託銀行の役割・仕組みは次の通りです。

 

資産管理信託銀行

例えば日本銀行がETFを購入する場合、まず機関投資家を経由して信託銀行にお金を預け、それから、信託銀行の名義で株式などを購入することになります。

要するに、信託口は証券の保管や配当の受け取りを委託されているだけに過ぎず、本当の株主は別に居るということです。

機関投資家は株価の値上がりや配当を出すことを強く求めるので、信託口が大株主に登場している会社は、株価上昇や配当に対するプレッシャーを強く受けていると考えてよいでしょう。

 

2.四季報・大株主欄で見る信託口

株主

四季報では、【株主】の欄に中間期を含めた直近決算期末時点の大株主上位10名と、その持ち株数、持株比率が掲載されています。

 

【株主】の欄の右に記載されているのが株主数、< >の中の数値は年月で、いつ時点の株主であるかを示していて、原則は年2回、第2四半期末と本決算期末で更新されています。
※第三者割当増資などで大幅な変更があった場合、判明している範囲で最新の株主を掲載しています。

冒頭でもお話した通り、四季報の大株主欄には信託口が名を連ねています。

 

[6752]パナソニックの筆頭株主も日本トラスティ信託口

次の画像は会社四季報2018年秋号の[6752]パナソニックのページです。

パナソニック

 

赤枠で囲んでいるのが資産管理信託銀行(信託口)です。

筆頭株主は日本トラスティ信託口で、そのほかに日本マスター信託口も大株主に名を連ねています。

 

3.信託口の一番の顧客は「クジラ」

クジラ

信託口にとって最大の顧客は、GPIFなど公的資金・準公的資金を運用している通称「クジラ」です。

「クジラ」とは

公的資金のGPIFの他に、約300兆円のゆうちょ銀行とかんぽ生命の日本郵政系の資産、そしてETFを年間3.3兆円買っている日銀の資産をあわせた総称。

日本の公的年金のうち、厚生年金と国民年金の約140兆円を運用する世界最大の年金基金です。

マイ

日本の年金基金が世界最大ってホント!?

column GPIFは世界最大の年金基金!?

以下は、運用資産が大きい年金基金TOP10です。

10位 PFZW(オランダ) 1964億ドル
9位 中央積立基金(シンガポール) 2271億ドル
8位 カナダ年金制度(カナダ) 2358億ドル
7位 カリフォルニア州職員退職年金基金(米国) 3066億ドル
6位 中国国家社会保障基金(中国) 3487億ドル
5位 ABP(オランダ) 4043億ドル
4位 韓国国民年金公団(韓国) 4622億ドル
3位 連邦退職貯蓄(米国) 4856億ドル
2位 政府年金基金(ノルウェー) 8931億ドル
1位 年金積立金管理運用独立行政法人(日本) 1.2兆ドル

出典:zuu online『「世界の年金基金トップ20」 日本のGPIFが首位、トップ300に日本の16基金』

 

ランキングは、ロンドンを拠点とするコンサルティング企業ウイリス・タワーズワトソン が、2016年4月1日~2017年3月31日のデータに基づいて作成したものです。

以上の通り、日本の年金運用額は他国と比べると群を抜いて多いことがわかります。

GPIFは長期の分散投資として、株が大きく下げたときに買い、大きく上がった時に売り、リバランスをする投資スタイルです。

※ちなみに、株式市場が大きく下げたときに外国人の大口の売りに対して信託銀行の買いが目立つのは、クジラの買いが信託銀行に現れるためです。

マイ

どうしてGPIFとかって信託口を通して運用しているの?

直接株買ったら良くない?

けーさん

信託口を通すことで、株の買い手の匿名性を保つことができるんです。

マイ

…どの銘柄を買ってるってのがバレちゃまずいってこと?

けーさん

その通りです。

もしGPIFが信託口を通さずに株を買って5%ルールなどの大量保有報告書で買っていることが判明すると、どうなると思いますか?

マイ

きっと提灯買いがつくわ。

イナゴタワーの完成ね。笑

けーさん

その通りです。こうなると、市場の公平性・健全性を欠く可能性が出てきますので、信託口を通す必要があるんです。

 

4.まとめ

ファンドマネージャー

(後半はGPIFの話に脱線しましたが、)今回の記事では、資産管理信託銀行についてご説明しました。

以下、この記事のまとめです。

日本の資産管理信託銀行3行
  • 日本トラスティサービス信託銀行…三井住友トラスト系
  • 日本マスタートラスト信託銀行…三菱UFJ信託系
  • 資産管理サービス信託銀行…みずほ系

いずれの信託銀行も預かり資産は数百兆円を超えていて、実質、メガバンク系の信託銀行が中心となって運用!

 

信託口の買いが入る銘柄は、日銀のETFの購入ペースから今後も継続して買われる可能性がある、増配への圧力がかかると考える方は多いと思いますが、いつかは機関も株を売らなければなりません。

市場環境や政府の動きに目を光らせながら投資をしていくことが今後重要になるでしょう。