株式が証券取引所で公開され売買されるようになることを上場と言い、上場された企業を上場企業と言います。
一方で、証券取引所に上場していない企業のことを非上場企業または未上場企業と言います。
⇒日本の全株式会社のうち上場企業は1%にも満たず、残りの多くの企業が非上場企業!
新規上場(株式公開)した企業数はリーマンショック以降、低迷が続いていました。
しかし、2015年以降は[6178]日本郵政、[7182]ゆうちょ銀行、[7181]かんぽ生命、[9142]JR九州などの大型上場が相次ぎ、株式市場が活性化しています。
郵政3社やJR九州などの大手企業が長年にわたり未上場企業であったということに驚いている方もいるではないでしょうか。
海外に目を向けると、LEGO、IKEA、ROLEXといった世界的企業も実は非上場企業なのです。
今回は、大手企業であるにもかかわらず非上場である企業を例に、株式公開のメリット、デメリットをご説明します。
1.非上場のメリット・デメリット
上場のメリットは、株式市場での資金調達が可能になる、社会的信用・ブランド力が高まるなど数多くのメリットがあります。
しかし、戦略的に株式公開をしない大手企業も多く存在します。
株式公開しないメリットは、
①株主の意見に左右されない経営ができる
②買収の危険性がない
③有価証券報告書の提出の義務がない
などが挙げられます。
上場すると、株主への事業や財務状況の報告が必須になります。
⇒株主への利益還元が必須となりますので、大企業でも自由な経営が妨げられます。
また、近年では自らの意見を表明し、積極的に経営に関わり改革に迫る「物言う株主」が増えています。
物言う株主は、積極的に経営改革を迫ることから「アクティビスト(行動主義者)」とも呼ばれ、M&A、低収益事業の売却、コスト削減、手元資金の活用、改革に消極的な役員の退任、改革推進派の役員選任などを要求する傾向があります。
この目的は、経営効率を高めて株価や配当を引き上げることです。
株式公開しないデメリットとしては、資金調達の手段が限られる、経営トップの暴走を防ぐことが難しいなどが挙げられます。
以上より、株主の意見に左右されず自由な経営方針を貫きたい企業にとって、非上場であることの方が都合が良いと言えるでしょう。
2.意外な非上場企業
次の会社リストにはあなたがご存知の会社がずらりと並んでいるかと思いますが、なんと、全て非上場企業なのです。
- JTB
- 大創産業(ザ・ダイソー)
- ロッテ
- 竹中工務店
- エースコック
- ヤンマー
- ミツカン
- 日本生命
- 明治安田生命
- 新聞・出版社 etc…
3.大手生命保険や新聞社、出版社はほとんどが非上場
日本生命、明治安田生命など多くの生命保険会社は非上場企業です。
その理由は、上記の生命保険会社は“株式会社”ではないことからです。
基本的に生命保険会社は、「相互扶助」の精神に基づき法律で「保険会社」のみに認められた会社形態となっています。
一方で、[8750]第一生命保険は、株式会社化しており上場しています。
その理由の一つとして考えられるのは、資金調達が容易であることです。
上場することで、株式市場で資金調達が可能となるだけでなく、M&Aの際の株式交換といった手法をとることも可能となります。
また、朝日新聞社、小学館、講談社など新聞・出版大手の多くは株式会社であるものの非上場です。
多くの新聞・出版社が上場していない理由は、報道の公正中立性を守るためと考えられます。
仮に、敵対的買収などにより株式を買い占められた場合、編集方針を変えられる可能性があることから、非上場を貫いています。
数少ない上場企業としては、出版大手を傘下に持つ[9468]カドカワが挙げられます。
理由は生命保険と同じく、資金調達や買収の容易さと考えられます。
4.まとめ
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大企業などの非上場企業が上場を選ばない理由について見ていきました。
誰もが知っているような有名な大企業の中にも、非上場企業は数多く存在し、大企業だから全て上場しているというわけではありません。
迅速な経営、トップダウン式の経営を貫くために、世界的に有名な大企業であっても非上場を選ぶということもあります。
大企業であっても非上場にする理由は、上場していないことのメリットを活かした意思決定力で経営に臨むためということからかもしれません。
また、新規上場にはコストがかかるため、コストを上回るメリットがなければ株式公開する必要性はない、という場合もあります。
非上場企業だったヨドバシカメラや東京メトロなどに今後の上場観測が出ているため、これらの企業の今後の動向にも目が離せません。
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