株式投資

投資家ならだれもが経験したことがある!? プロスペクト理論って何?

お金 プロスペクト理論

 

  • なぜ自分が買った銘柄だけ下落するのか?
  • なぜ株式投資や仮想通貨で含み益を溶かしてしまうのか? また、損を取り戻そうとしてギャンブル性の高い投資行動をしてしまうのか?
  • パチンコで出た玉がすべて「飲まれ」てしまった後に、損していないのに追加で資金を投入してしまうのか?

もしかすると、その問題の答えはプロスペクト理論にあるかもしれません。

プロスペクト理論とは一体何でしょうか? ※[3528]プロスペクトとは関係ありません。

プロスペクト理論(Prospect theory)

行動心理学の一つ。米・経済学者カーネマン氏、心理学者トヴェルスキー氏が提唱した理論で、人は利益と損失に異なるウェイトを置いており、利得を得て幸せなときよりも同等の損失による痛みの方が大きく感じる、というもの。また、人は利益を得る場面では「確実に手に入れること」を優先し、対して、損失を被る場面では「最大限に回避すること」を優先する傾向があるという行動心理を表した理論。

 

プロスペクト(Prospect)は、「予想、見通し、展望」といった意味があります。

行動心理学の第一人者、カーネマン氏はプロスペクト理論の発表で2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。

今回の記事では、プロスペクト理論について掘り下げ、多くの投資家が陥るからプロスペクト理論のマインドについて理解しましょう。

損することが大嫌い=プロスペクト理論の本質

プロスペクト理論を一言で表現すると、

人は“得をするよりも、損をしたくない思いの方が強い(損することが大嫌い)”です。

 

人間は、いかなる場合でも合理的に行動する生き物だと思われていました。しかし、損得が絡むケースでは「非合理的な行動」を取ってしまいます
これがプロスペクト理論の本質です。

ここで、プロスペクト理論の説明として有名なコインゲームの例をご紹介します。
コインゲームの例

コインのゲームに参加すると、あなたは大金を手に入れられるか、もしくは手持ちの資金を失います。

表:100万円もらえる
裏:50万円を失う

コインを投げて表と裏が出る確率は当然ながら50%ですので、このゲームがあなたにとって有利なことは明白です。

しかし、あなたにはコインのゲームに参加しないという選択肢もあり、ゲームに参加しない場合はノーリスクで20万円を手に入れることができます。

さて、あなたはゲームに参加して「100万円GET or 50万円を失う」か、「20万円を確実に手に入れる」かどちらを選びますか?

 

実は、このゲームでは、多くの人が「確実な20万円」を選択します。

しかし、このコインゲームで合理的な判断をするなら、「20万円をもらう」という選択よりも、ゲームに参加して「100万円GET or 50万円を失う」という選択の方がお得なのです。

 

期待値の計算

以下の通り、期待値を計算することでどちらが得か計算できます。

・100万円GET or 50万円を失う
⇒(100×0.5)+(-50×0.5)=期待値25

・確実に20万円を手に入れる
⇒(20×1.0)+(0×0)=期待値20

つまり、コインゲームに参加した方が期待値は大きい、ということです。

しかし、人間は直感的にリスクが小さく確実な方を選んでしまいます。期待値が小さいにもかかわらず、です。

 

コインゲームではイメージがつきにくかった方がいるかもしれませんので、投資に当てはめて考えてみましょう。

 

プロスペクト理論×投資

①保有株が値上がりして含み益が10万円になった後、やや下がってきて含み益が6万円になると、心理的に利益確定が難しくなる

⇒これは、一度経験した「100万円の含み益」が失われて6万円の含み益になってしまったことで、再び含み益が10万円になることを期待してしまう、という心理です。しかし、株価は既にピークアウトして値下がりしているわけですので、一度利益確定するのが合理的な行動と言えます。

 

②含み損になった途端、最初に急激に苦痛が襲う、そして次第に感覚麻痺する

⇒これは、購入した銘柄が含み損に転じたことで、含み益の状態とは打って変わって大きな苦痛となる、という心理です。
さらにプロスペクト理論においては、損失の金額が大きくなるほど心理的な痛みが減ってくるため、一定の金額を越えるとそれ以上はどれだけ損失拡大しても「どうでもいい」という状況になります。いわゆる「塩漬け」の状態です。
プロスペクト理論の条件下では、利益・損失の大小と心理的な嬉しさ・痛みは比例しません。この状態はいわば「金銭感覚の麻痺」です。金額の大きさや時間の経過が金銭感覚の麻痺させます。

 

③利益獲得局面では危険回避的である(確実性を好む)一方で、損失局面では危険追求的となる(ギャンブル性を好む)

⇒普段ならギャンブルなどせず、確実に儲かる道を選ぶのに、損失を抱えているという前提がつくと、それを取り戻すために大勝負・ギャンブル性の高い投資行動に及ぶようです。

これらがプロスペクト理論の正体です。

まとめ

プロスペクト理論とは、人は「得をするよりも、損をしたくない思いの方が強い」という行動経済学の理論です。

「損したくない」という気持ちは、「一度所持したものを失いたくない」という感情も生み出します。

人はとにかく、「損したくない、失いたくない」という気持ちが強いため、10万円儲かる嬉しさよりも、10万円損する悔しさの方が大きくなります。

 

投資はテクニカルやファンダメンタルズを読み解く、個々の技量ももちろん大切ですが、どんな相場でも毅然と立ち向かえるメンタル・思考を持ち続けることも同じくらい大切です。

この記事を読んで自分の投資行動に思い当たった人は、プロスペクト理論をよく理解し、自分の性格とマッチする投資手法・スタンスを編み出しましょう。