「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」は、「アダストリア」や「ワールド」など約7000のブランドが出店する、国内最大のファッション通販サイトです。
2004年のサイト開設以来、20~30代を主軸としたファッションに関心の高い若者を顧客に獲得してきました。
サイズ表記などを充実させたサイトの利用しやすさや品ぞろえの豊富さを武器に、「試着が必要な服はネットで売れない」という常識を覆し、国内最大のファッション通販サイトへと飛躍を遂げました。
サイト開設当初は、「ユナイテッドアローズ」や「ビームス」といったセレクトショップ系の中高価格帯のブランドが中心で、ユーザーは“ゾゾタウンでオシャレな服が買える”というイメージが根付き、それを見越して出店を決めたブランドも多数ありました。
しかし、ここ数年、“脱・ゾゾタウン依存”を模索するブランドが徐々に増えています。
直近の例では、2018年12月25日、「23区」や「自由区」などを展開する老舗アパレル「オンワードHD」は、同社傘下の全ブランドのゾゾタウンでの商品販売の取りやめを決定しました。
ゾゾタウンが12月25日に始めた会員割引制度「ZOZOARIGATOメンバーシップ」に、オンワードへの参加を呼びかけましたが、双方の主張が折り合わなかったようです。
「ZOZOARIGATOメンバーシップ」に加入するとどんなサービスを受けられるの!?
同制度は、年額3000円(または月額500円)の有料会員になると、ゾゾタウンでの商品購入金額から10%割引されるというものです。
ブランド側にとってネックになるのは、割引分、ブランド側の利益が減っちゃうところなのかな?
いえ、同制度での割引分はZOZO負担です。
よって、ブランドにとって直接的な利益のマイナス影響はありません。
※割引された額については、指定する団体への寄付などに使うこともでき、ZOZOは社会貢献型のサービスと説明しています。
今回の記事では、ZOZOの課題として挙げられているアパレルブランドの“ゾゾタウン離れ”について詳しく解説します。
1.ブランド側が“脱・ゾゾタウン依存”を模索する理由
①安価なブランドの出店増でレッドオーシャン化している
ZOZOの事業規模が拡大によって、ゾゾタウンが取り扱うブランドの幅も急速に広がりました。
それに伴い、ここ数年は楽天やアマゾンに出店するような安価なブランドが増えてしまい、実際、ゾゾタウンの直近の平均商品単価は、
5年前の時点の実績 5011円
直近実績(18年度2Q時点) 3655円
と3割近く下落しているのが現状です。
これによって、実店舗では横並びにならないような高価格帯のブランドと安価なブランドの商品がサイト上に入り乱れてしまい、価格だけで比較購買される傾向が一段と強まる結果となりました。
ネット上では、素材感の違いとか高級感とかは伝わりづらいし、これだと高価格帯ブランドが苦戦するのは納得ね~
②割引セール戦略によりブランドイメージが毀損される
ゾゾタウンで頻繁に開催される割引セールや各ブランドがばらまくクーポン値引き合戦も白熱化しています。
その影響で、“ゾゾタウンで常に安く売られている”というイメージが付きまとうことを懸念するブランドが増えるようになりました。
オンワード撤退はこの要因が大きかったようです。
③ZOZOに支払う出店手数料が高い
売り上げに応じてZOZOに支払う出店手数料の高さも、ブランド側が“脱・ゾゾタウン依存”を模索する理由になっている。
ブランドからの手数料収入を収益柱とするZOZOは、新規出店したブランドに課す手数料の比率を年々引き上げています。
現在の平均は売り上げに対して30%台半ばに達し、安価なブランドでは残る利益はごくわずかのようです。
売り上げが増加しても利益は残らない、といった事態を防ぐため、ブランドによっては新商品や主力商品は手数料の掛からない自社サイトで売り、ゾゾタウンでは売れ残った在庫を集中的に販売するなど、サイトを使い分ける動きも出始めているのが現状です。
column オンワード撤退の決め手とは
オンワードは上述の通り、「自社商品の値引きが日常的に行われることでブランド価値を毀損する可能性が高い」と判断し、撤退に踏み切りました。
ブランドイメージ面も大きいのですが、元々百貨店向けブランドが多いこともあって、比較的若い顧客中心のゾゾタウンとの親和性は必ずしも高くなかったようです。
また、オンワードはネット通販での売上のうち、自社が運営するサイトでの販売比率が7割と高い水準を誇っており、元々ゾゾタウンへの依存度も高くない点も撤退の要因として挙げられます。
当然ながら、撤退による業績への影響は軽微と見られます。
2.まとめ
圧倒的な集客力を誇るゾゾタウンに出店すれば売り上げ確保やブランドの認知度拡大を図ることができます。
しかし、多くのブランドはなかなかゾゾタウン依存から抜け出せないのが現状です。
オンワードのように自社サイトでの販売比率が比較的高いアパレルは、今後のZOZOのサービス方針次第で「ゾゾ離れ」が続く可能性もあります。
また、ユナイテッドアローズについても、現在はZOZOの子会社アラタナに開発を委託しているが、自社ECサイトの開発体制を見直すため、他社へ切り替えることを検討しているようです。
ZOZOの前澤友作社長は年末、2018年を漢字四文字で表すと「試行錯誤」だったとTwitter上で振り返っていました。
今年一年を漢字一文字で表すと「月」、
今年一年を漢字四文字で表すと「試行錯誤」
— Yusaku Maezawa (MZ) 前澤友作 (@yousuck2020) 2018年12月31日
ゾゾタウン事業は今のところ順調な拡大が続いていますが、昨年は、PB事業で商品の発送遅延などのトラブルが発生していました。
「ZOZO離れ」は、2019年も同社の大きな課題となりますが、アパレル業界の動きにも引き続き目が離せません。
最後に、日頃ZOZO社長に対抗心を燃やしているロコンド社長のZOZO離れに対するコメントを掲載しておきます。
昨日もオンワードさんのZOZOさん離脱報道がありましたが、これからも規模が大きいブランドさんから順番に、この流れは続くでしょう。
もちろんウチも例外ではありません。自宅で試着、というお客様にとって利便性の高いサービスを提供したとしても、商品自体が無ければ意味がありません。続く。
— Yusuke Tanaka 田中裕輔 (@Yusuke_Tanaka) 2018年12月29日
だからこそ来年は、EC売上を上げる「以上」の価値、具体的にはブランドさんの全体売上・全体利益を大幅にUPする、という更に大きな価値を提供できるEC企業しかこれからは生き残れない、という危機感と使命を持ち、チーム一丸となって邁進して行きます。
来年もロコンドをどうぞよろしくお願いします。
— Yusuke Tanaka 田中裕輔 (@Yusuke_Tanaka) 2018年12月29日
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