次のニュースは、先週の朝日新聞の記事です。
東芝子会社で架空取引200億円規模 循環取引繰り返す
東芝は1月18日、連結子会社の東芝ITサービスで2019年9月中間期に架空取引が見つかったと発表した。
対象の取引は売上高ベースで200億円規模と見込まれるという。
複数年にわたって架空取引を続けていた疑いもあり、さらに調べる。
不正の規模が膨らむ可能性もある。
東芝は2月14日の19年4~12月期決算の発表にあわせて社内調査の結果を発表し、決算を修正する予定だ。(中略)
東芝によると、取引の実態がないのに帳簿上はあったように装う循環取引を繰り返したとみられる。
出典:朝日新聞(2020.1.18)
東芝ITサービスにおいて、2019年4~9月期に売上高に200億円規模の架空計上があったことが判明しました。
この取引に、東証1部上場のシステム開発会社ネットワンシステムズと日鉄ソリューションズが関わっていました。
「循環取引」って何!?
複数の会社間で取引を連続させて製品や資金を回し合い、実態のない売上高や利益を計上すること。
う~~ん。実態の無い架空の取引をするのは良くないことなんだろうけど、目的がよくわからないわ~
循環取引を行うことで、売上高を意図的に操作できるようになります。
企業側のもくろみは、売上を水増しすることで、金融機関の融資など資金調達に有利になることです。
なるほどね!確かに売上が多いと成長性が高い会社なのかなって思っちゃうわ!
確かに、そうですよね。
循環取引ってあまり聞かない言葉だったと思いますが、かつてこんな事件が起こっていました。
column 循環取引過去事例
◆冷凍食品の加ト吉(現・テーブルマーク)
⇒同社は2007年に循環取引が発覚し、資本提携していた日本たばこ産業(JT)に救済される形で、JTの傘下に入ることになりました。
◆昭和電工の子会社の昭光通商
⇒同社は2016年に循環取引に巻き込まれていたことが発覚し、その後決算や有価証券報告書を訂正する事態となりました。
話し戻るけど、東芝、こんなことで東証一部に復帰なんて無理じゃない?大丈夫なのかな…
東芝、東証一部への復帰は…?
東芝は2015年に不正会計問題が発覚した影響で、東証2部に降格していて、早期の1部復帰を目指していました。
その矢先に発覚した今回の不祥事は、信頼回復には程遠い実態を露呈させた結果となります。
今回の東芝子会社の架空取引は、実は、証券業界関係者に絶大な失望感を与えたんです。
東証が2019年末に2部から1部への復帰の要件を緩和することを決めていました。
東芝へのお膳立てのような処置です。今回、これを東芝自ら台無しにした形になったというわけです。
column 東証の東芝への緩和策
-これまでのルール-
1部復帰には監査法人の適正意見がついた有価証券報告書が5年分必要
-変更後のルール-
1部復帰には監査法人の適正意見がついた有価証券報告書が2年分必要
東芝はすでに2年分の有報を提出しているため、すぐにでも1部への移行を申請できることになり、審査に通れば復帰できるようになります。
このような緩和策は、「明らかに東芝への優遇策だ」と一部からは批判の対象にもなっています。
批判されるのも無理ないわね。
東証の立場からしても、今回の東芝の一件は迷惑な話ね。
そうですね。不正会計や隠蔽体質が何も治っていないという企業を1部復帰させようものなら、東証への批判も避けられないことでしょう。
東芝は5年くらい前の米国原子力事業の巨額損失を隠していたこともあったし、隠蔽体質としか思えない…
まとめ

今回の記事では、連結子会社の東芝ITサービスで発覚した架空取引の報道をもとにニュース解説をしました。
東京商工リサーチの調べによると、2019年1~11月に不適切会計を開示した上場企業は64社となっています。
この数字は、前年同期比18.5%増となっています。
また、社数、件数ともに集計を開始した2008年以降、過去最多となったそうです。
増えすぎじゃん…
どういうケースが多いとかってあるの?
特に、子会社・関係会社が舞台となっているケースが多い傾向にあります。
売上増や利益捻出のための不正経理が多いようです。
親会社に比べて、目が届かないところで悪事をはたらいているのかしらね~
恐らくそうなのでしょう。実際に、今回循環取引に加わったとみられる東芝ITサービスや日鉄ソリューションズも、それぞれ東芝と日本製鉄の子会社です。
子会社のガバナンス体制にもしっかり監視の目を行き届かせる必要がありますね。
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