今回の記事では、保有株がTOB(MBO)された場合、私たち投資家はどのように対応すればよいかについて解説します。
いきなりですが、マイさんに質問です。
例えばマイさんがルイヴィトンのバッグを50万円で買ったとします。
その数年後、誰かから「あなたのバッグの現在の査定価値は20万円ですが、その1.5倍の30万円で買うので渡してください」と言われ、強制的にバッグを取り上げられたらどう思います?
ブチ切れますよ!たぶん!
思い出も詰まっていればなおさらです!
でしょうね。私でもなんで!?ってなります。
価値がどうとか知らないよってなりますよね。
でもね、株の世界では、時にこんなことがあり得るんです。
えっ!?自分が買って保有している株なのに…?
なんだかいい気がしない…
これは一体どういうことかと言いますと、株式の場合「保有する権利」はあっても「持ち続ける権利」は認められていないということです。
つまり、誰かが「あなたの保有株式の市場価値は20万円ですが、1.5倍の30万円で買い取るので株式を渡してください」と言い、法的に認められた手続きをとれば、みなさんから強制的に保有株式を取り上げることができるのです。
このようなケースが起こるのは、投資ファンドによる企業買収、経営者による企業買収(MBO)、親会社による上場子会社の完全子会社化、株式公開買付け(TOB)などです。
保有株式がTOBにかかりその後、上場廃止となる場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
TOB(MBO)への対応の仕方
まず公開買付け価格(TOB価格)が納得いくものであれば、TOBに応じて売却すればOKです。
この場合、売買手数料なしに保有株式を売却することができます。
ただし、TOBに応じる場合には、TOBの公開買付け代理人となっている証券会社へ保有株式を移管して行う必要があります。
たまたまあなたが、公開買付け代理人となっている証券会社でその株式を買っていたのであれば移管の手間はありません。
しかし、別の証券会社でその株式を買っていた場合、移管に手間がかかり、証券会社によっては移管手数料がかかる場合もあります。
手続き?ややこしいなぁ…
TOB発表後に、普通に市場で売っちゃダメなの?
もちろん、市場で売却も可能です。
手続きいらずでラクですし、売買手数料を気にしないなら市場売却でOKです。
TOBが公表されれば、市場価格はTOB価格と大体同じくらいになります。
TOBなら、今年こんな例がありましたよ。
[1420] サンヨーホームズ
4/26、[1420]サンヨーホームズに対して、[3751]日本アジアグループがTOBを実施しました。
TOBは発表日の終値848円の約1.4倍の1株1200円のため、その価格にサヤ寄せする形で、発表後は株価が推移しています。
出典:MONEX Trader
市場価格がTOB価格に近づくことを“サヤ寄せ”すると言いますが、
この表現、経済ニュースに時々出てくるので、頭の片隅に入れておいてくださいね。
TOBの際の対応としては、これら2つ以外にも、強制取得されるのを待つという方法もあります。
どういうことかというと、上場廃止してからみなさんの保有株式は買収者に強制取得され、対価としてTOB価格と同額の現金が交付されるのを待つ、ということです。
この方法のメリットは、初めに解説した手段と同様に、移管手数料や売買手数料が発生しない点です。
その一方で、デメリットとしては、上場廃止→強制取得→現金交付までに通常2〜3か月程度かかり、その間、現金を手にできないという点です。
「早く現金を手に入れて、他の銘柄に投資したい!」という方には不向きな手段と言えます。
なるほどね。大体仕組みはわかってきたわ。
じゃあ、もしも買い取ってもらう価格が納得いかないよ、ってときはどうすればいいの?
もしも、50万円で買っていた株が70万円で買い取ってもらえたらラッキーだけど、30万円で買い取ります!って言われたら、私、損しちゃうよね。
お!いい質問ですね!
確かに、長期間塩漬けていたなら、そんな展開もあり得るかもしれませんね。
Column TOB価格にどうしても納得がいかないときには…?
TOB価格に納得がいかない場合にはどうしたらいいのか。
冒頭で解説した通り、日本の法制度では「株式を持ち続ける権利」は認められていませんので、株式を取り上げられること自体を争うことはできません。
争うとすれば、買い取り価格が不当だ!という争い方になります。
具体的には、価格決定の申立てという裁判制度を利用し、TOBには応じないでおいた上で、その後の株式売渡請求や全部取得請求、株式併合に反対して価格決定の申立てという裁判を提起するというものです。
※基本的に、これは一般の投資家が行うアクションではないことだけはご留意を。
まとめ
TOB(MBO)への対応の仕方
①TOBの公開買付け代理人となっている証券会社へ保有株式を移管して手続きをする
⇒手続きが面倒。しかし、確実にTOB価格で売却できて手数料もかからない!
②市場で売却する(推奨)
⇒手続き不要!普段通りの取引と同じように売却するので簡単!売買手数料がかかることだけ注意。
③強制取得を待つ
⇒①と同様、手数料がかからない。しかし、現金交付に時間がかかるのが難点。
※TOB価格に不満があれば、申し立てすることは可能ですが、基本的に受け入れるのが一般。
TOBって奥が深そうね~
簡単にこういう企業買収の知識を学べる方法ってないかしら?
気軽に学ぶということなら、企業買収が題材の映画を観てみるといいかもしれません。
企業買収が題材だと難しい印象ですが、解説が豊富な映画やラブコメ作品もありますので、是非観てみてください!