以下は、今年2/11(月)のニュースです。
1部上場の時価総額、基準引き上げへ…東証検討
東京証券取引所は、東証1部への上場に必要な企業の時価総額基準を引き上げる方向で検討に入った。
上場企業約3700社のうち、東証1部が約6割を占め、マザーズなど新興企業向け市場との違いがわかりづらいとの指摘があるためだ。
東証は、近くまとめる市場の改革案に新基準を盛り込み、再編後の市場の魅力を高めたい考えだ。(中略)
東証は、今回の見直しで基準を統一する。優遇措置を撤廃し、新たに東証1部に上場する場合、必要な時価総額を500億円以上とする案が出ている。
出典:読売新聞オンライン(2019.2.11)
ニュースの通り、優遇措置を撤廃し、新たに東証1部に上場する場合、必要な時価総額を500億円以上とする案が出ています。
この見直しが議論される経緯は、東証には第1部市場に関してプレミアム感が失われているという問題意識が浮上しているためです。
これが実現されたら、インパクトは計り知れないわね。
ですね。指数への影響も必至ですので大きなテーマと言えます。
まずは、今の東証1部上場基準について、整理しておきます。
0.まず初めに、東証1部上場要件とは
東証1部に上場するための要件は主に2つあります。
東証1部上場 時価総額の要件
- 未上場企業が直接1部上場する場合→250億円以上の時価総額が推定されること
- 東証2部あるいはマザーズからの鞍替えの場合→40億円以上の時価総額条件を満たすこと(JASDAQからの鞍替えの場合、時価総額250億円以上)
見ての通り時価総額要件に関して、いきなり東証1部への上場は難しいですが、新興市場に上場して段階を踏めば、ハードルが大幅に下がります。
確かにそうね。
一旦新興市場に上場してから時価総額40億円の壁を超えるのは、優待新設とかすれば難なく要件満たせちゃいそうなものよね~
1.東証の課題と見直し案について
ニュースの通り、優遇措置を撤廃し、新たに東証1部に上場する場合、必要な時価総額を500億円以上とする案が出ています。
この経緯としては、東証には第1部市場に関してプレミアム感が失われているという問題意識によるものです。
現状、上場企業約3700社のうち、東証1部が約6割を占めています。
実は、かつて、東証1部に直接上場する基準は500億円以上だったんですよ!
ホント!?今の2倍じゃん。何かきっかけがあったとか?
2008年のリーマンショックで新規上場が急減しました。
そのため、2012年に時価総額の基準を半分の250億円以上に引き下げたんです。
他の国の上場基準まで歪めてしまうリーマンショック、半端ないわね…
>>投資家必見!リーマンショックが題材のオススメ洋画TOP3!
この時の緩和により弊害が生じているというのが、今回のニュースの要点の一つと言えます。
ここからは私見です。
優遇措置を撤廃し、新たに東証1部に上場する場合、必要な時価総額を500億円以上とする案が施行されるとどのようなことが考えられるでしょうか。
2.基準見直しで期待されること・想定されること
①時価総額が数十億円~数百億円の東証1部の中小型株の買い需要剥落
時価総額が数十億円~数百億円の東証1部の中小型株は、TOPIXに代表されるパッシブ運用による買い需要が剥落するので、機械的に売られることとなります。
また、この時価総額の銘柄は、個人投資家が好んで買っていることが多く、中小型株全体にマイナスの影響を与えうると言えます。
②株主優待の導入(拡充)で東証1部昇格を実現した企業群の優待廃止
株主優待の導入あるいは拡充によって、株主数や時価総額、流動性といった形式要件を確保し、東証1部昇格を実現させた企業群には特に注意すべきでしょう。
このような銘柄は、1部鞍替え後も時価総額100~200億円程度に留まっているケースも多く、小手先の対策では新基準の下限値として検討されている500億円には届きません。
その場合、早々に東証1部残留を断念する企業が現れることが十分に考えられます。
そうなると、株主優待の実施で満たしていた形式要件を維持するインセンティブがなくなってしまうため、優待廃止が考えられます。
すると、①で説明した買い需要剥落と優待廃止の二重の売り需要が発生する可能性があります。
3.まとめ
今回の記事では、東証が見直しを検討している一部上場の要件について、解説をしました。
現在、東証は上場基準の見直しだけでなく、東証1部と2部、JASDAQ、マザーズの市場区分の見直しについても検討しています。
その見直し案の一つには、東証1部の中から特に時価総額が大きい企業を集めたプレミアム市場を作るという案も出てきているようです。
ちなみに、2018年末のニュース記事では、「東証2部とJASDAQの統合案」についても話題となっていました。
>>メリットはある!?東証2部とJASDAQの市場統合について解説!
2012年、東証1部上場の基準を現行のものに変更した際、当時次のような資料が作られていたそうです。
2012年に時価総額500→250億円に引き下げた際に東証の方針として「中堅・中小企業の活性化」を目的とすると明記しており、一部上場企業の社数が増加したのはその施策の成果が発揮されたことに他ならず、今になって「社数が多い」というのは支離滅裂です。 pic.twitter.com/2HLvv8Z8LT
— |■■) (@pant_moon) 2019年2月11日
今と昔で言っていること全然違うんだね…(笑)
見直し検討が良いか悪いかは別として、制度にとらわれることなく個々の企業を見ていく姿勢が大切だと私は思います。
個人投資家の私たちは、「東証1部」に過剰な意味合いを見い出す必要はありません。冷静かつ公平な視点で企業の質を評価していきましょう。
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