今回の個別銘柄研究は、学生マンションの賃貸に特化した[3480]ジェイエスビーについてです。
今月12日に、18年10月期決算にて7期連続増収、6期連続増益(最高益更新)達成が発表されました。
同社は1976年に創業し、「学生にとってマンション住まいは贅沢過ぎる」という風潮の中で学生マンション管理事業を開始しました。
大学、大学院、専門学に通学する学生が居住するマンションのことを指す。主な特徴は、
- 賃借人・家賃の支払い者が居住者の保護者である
- 賃借期間が決まっているため卒業予定にもとづき退去時期の予測がしやすい
- 賃貸期間中の中途解約・転居が少ない
同社は不動産所有者に学生を対象としたマンションの企画を提案し、マンション竣工後に一括借上を行い、不動産所有者に定額の家賃保証を行った上で、学生等の入居者に転貸する不動産賃貸管理事業を主要事業としています。(2017年10月期売上高構成比93.5%、営業利益構成比96.6%)
2017年4月時点のマンション運営・管理戸数は60,154戸(前期は56,735戸)です。学生マンションの管理戸数では業界首位です。
学生マンションは入居者の資格を原則として学生に限定していることから、卒業等による入退去の時期が一般の賃貸住宅と比較して把握しやすいのが大きな特徴です。
同社では、この特徴を生かし、次期入居者の募集を開始することで同社は高稼働(2017年4月時点の稼働率は99.9%)を維持することが可能となっています。
学生マンションは一般賃貸マンションと比較してセキュリティが充実している場合が多く、隣の入居者も学生であるという安全な面を利点としているため、一般賃貸住宅より賃料が高く設定してあっても契約者を手堅く獲得できるようです。
1.ジェイエスビーの強み
①学生マンションのノウハウ蓄積による高稼働
入居者を学生に限定、通学に適した場所に、セキュリティを重視した物件を建築し、学生の入退去の特徴に適した募集を行うことで、99.9%という超高稼働率を誇っています。
これにより、不動産賃貸管理事業のセグメント利益率は7.9%となっています。
業界首位である大東建託の不動産事業の利益率は3.0%、レオパレス21の賃貸事業の利益率は4.7%ですので、非常に高い水準であることがわかります。
②大学および大学生協との提携関係
40年以上、学生向けの賃貸住宅にかかわっていることで大学や大学生協との提携関係を築き、他社には真似できない入居者の募集が可能なのが同社の強みです。
大学との提携では、約700校中約300校の大学と学生マンション等の仲介に関する業務提携を締結しており、合格通知へのパンフレット同封、オープンキャンパスに合わせた部屋紹介ツアー開催、新入生向けに大学内での下宿相談会などを実施しています。
また、全国各地の大学生活協同組合との提携によって、学生生活実態調査のデータ活用も行っています。
創業時から培ってきたジェイエスビーと大学、大学生協との提携関係は、新規参入や競合企業にとって大きな障壁と言えます。
2.ジェイエスビーを取り巻く市場
同社は、学生マンション需要の安定的な拡大を見込んでいるとのことです。
その背景として、
- 年々学生数が増加していること
- 学生がプライベートな時間・空間を重視し寮よりマンションタイプを好む傾向にあること
- セキュリティに対する学生や保護者の要望が高くなっていること
が挙げられています。
出生数の減少によって大学・大学院生の主要年齢層である18歳から24歳の人口は減少傾向にあります。
しかし、進学率の上昇に伴い学生数のみならず大学・大学院の数も増加傾向にあります。
大学全体の在学者数推移
※ジェイエスビーHPより
3.今後のジェイエスビー
JSBは2017年12月に2018年10月期から2020年10月期までの中期経営計画を発表しています。
同社では、この中計をその後の持続的な成長のための経営基盤構築の期間と位置づけています。
中期計画における市場想定として、少子高齢化が進展する中で4年生大学への需要、留学生の増加から学生数は安定的に推移するとみています。
また、同社によると、下宿学生数1.88百万人のうち学生マンションの戸数は約7%程度にとどまっており、安全性の高いマンションへの需要が高まっているにもかかわらず、学生向けマンションの供給は不足しているとのこと。
⇒まだまだ学生マンションの需要はアリ!
サービス付高齢者住宅については、2017年現在の22万戸に対して、国土交通省は2020年までに60万戸に増加する目標を掲げており、市場が拡大することを予想。
⇒国のお墨付き事業とあれば、補助金や優遇政策が発表されて追い風に!
しかし、2017年10月期において、高齢者事業は、同社の売上高およびセグメント利益の5%を下回っています。
まだまだ実績が乏しく事業に特に新規性も感じないですが、今後シェアを広げられるのか…
JSB学生マンションの差別化、サービス品質向上のため、今後、以下の2点に積極的に取り組む方針です。
①食事付きの学生マンションの開発拡大
2017年10月期において、同社の食事付き学生マンションの管理戸数は2,618戸(前期比50.8%増)でした。
中期計画では、物件の付加価値を高める取り組みとして食事付き学生マンションの開発を拡大する方針です。
②留学生を対象とするビジネスモデル確立
留学生事業を拡大する日本学生支援機構「平成28年外国人留学生在籍状況調査結果」によれば、2016年度において留学生は23.9万人(前年度比14.8%増)でした。
文部科学省は、2020年を目処に留学生受け入れ30万人を目指す計画を掲げています。
※ジェイエスビーHPより
2017年12月時点で、同社は外国人留学生向け賃貸物件ポータルサイト、日本語学校3校を運営しており、中期計画では、今後増加が見込まれる留学生対象の物件や国際交流寮などの開発・管理、留学生向けの住まいの仲介業務に力を入れていく方針です。
4.まとめ
今回は、普段あまり深く調査しない不動産銘柄の研究をしてみました。
ジェイエスビーは、大東建託やレオパレス21などの業界最大手に比べると事業規模は小さいですが、学生マンションに特化させたビジネスモデルで非常に高い利益率を実現している点は高く評価できます。
また、学生数が減少傾向に転落しない限りは、学生が主要顧客であるため景気動向の影響は限定的とみてもいいでしょう。
年々増加傾向にあり国が力を入れている高齢者向けビジネスを今後積極展開していくとのことなので、今後も同社の動向には注目です。
加えて、JSBは外国人留学生向け賃貸ブランドを2017年に立ち上げています。
2018年12月の入管法改正法案の可決されたことから、外国人労働者の受け入れ拡大に伴う留学生の流入も勢いを増すことが予想されます。
入管法改正法案についてはこちらの記事でご紹介しています↓
上場している競合企業には、
- [8908]毎日コムネット
- [9616]共立メンテナンス
などが挙げられます。
ジェイエスビーの投資を検討している方は、これらの銘柄との比較をしてみましょう。
以前、1回きりの記念優待の実施していましたので、いつか常設の優待を発表してくれないかと期待しています。
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