日本には「株主優待制度」という、上場企業が株主に感謝して贈り物をする制度があります。
本来、株主には配当金を支払うことで利益還元するのが筋であり、株主優待制度は、実は世界ではあまり例がない制度です。
しかし、日本の個人投資家には、配当金をもらう以上に贈り物(株主優待)を喜ぶ風潮があることから、株主優待を新設する企業は増えています。
小売・外食・食品業では、個人株主がそのままお客さま(会社製品の購入者)になることもあるので、宣伝活動の一環として自社製品を優待品に採用する企業が多数あります。
配当+優待で4%を超える高利回り銘柄もあるので、積極的に活用していくべきでしょう。
その魅力とリスクについて、これだけは知っておいてほしい4つのポイントを解説します。
(1)最小投資金額で多数の銘柄に分散投資しよう
優待制度は基本的に小口の個人株主家に有利で、大口の機関投資家に不利な内容となっています。以下は、典型的な優待の一例です。
[3969]エイトレッドの株主優待の例
3/9月末の株主名簿に記載されている株主にQUOカードがもらえます。
保有株式数 | 100株あたりの優待 | 100株あたりの優待の導出式 |
100株以上 | 2000円相当 | 2000円 |
300株以上 | 1333.3円相当 | 4000円÷3 |
1500株以上 | 400円相当 | 6000円÷15 |
3000株以上 | 266.7円相当 | 8000円÷30 |
以上の通り、100株当たりの経済メリット享受額は、最小単位(100株)を保有する株主が2000円で最大です。保有株数の大きい株主は、100株あたりの優待受け取りが小さくなります。
株主優待制度は、小額投資の個人株主を優遇するものがほとんどです。
(例外 多木化学:100株以上 1000円分のQUOカード 200株以上 3000円分のQUOカード)
個人株主数を増やしたい上場企業が、優待制度を活用して、個人株主にアピールしています。
したがって、少ない資金で効率的に優待取りを狙うなら、最低単元で、より多くの銘柄に投資すべきと言えます。
(2)優待券は普段利用している店のもの、使いたい!と思えるものを手に入れよう
人気の優待券に、外食業の食事券があります。基本的に有効期限つきのため、使わずに失効させてしまえばメリットが得られません。
人気の株主優待券ですと、ネット上や金券ショップで売却できる場合もありますが、安く買い取りされるためおトクとは言えないでしょう。
500円の食事券が400円で売れれば、良いほうです。500円の券が半額程度でしか売れないこともあり、人気のない優待券は買い取り不可の場合もあります。
航空優待券(JAL、ANA)は、その時々の需給によって価格が変動します。供給が増えるとき(優待券が株主に贈られるとき)に下がり、旅行需要が増えるときには上がる傾向があります。近所にチケットショップがあれば、直接売り値や買い値を問い合わせることもできます。
人気の株主優待割引券でも、有効期限までの期間が短いと、売れないことがあります。使う機会ない場合は、早めに売却するようにしましょう。
(3)優待だけを見るのではなく、総合(配当+優待)的に利回りの高い銘柄を選ぼう
日本の個人投資家は、配当金よりも株主優待を好むという傾向がありますが、度が過ぎると非合理な行動につながります。
配当と株主優待を合わせて、メリットの大きいところを選ぶのが得策です。
2,000円分のカタログギフトを贈ってくれる銘柄を歓迎し、同じ投資金額で、源泉税差し引き4,000円の配当金がもらえる銘柄を避ける、といった行動は非合理と言えます。
(4)権利日直前に株価が大きく上昇している銘柄は避けよう
魅力的な株主優待で有名な銘柄には、優待の権利取り直前に株価が急騰し、権利落ち後に株価が急落するものもあるため注意を要します。
優待の権利取り前に株価が急騰している銘柄は、投資を避けるのがベターと言えるでしょう。
年2回(中間決算と本決算)に分けて優待を出す銘柄では極端な値動きは少ないですが、年1回(本決算のとき)だけ人気の優待を出す小型株では、権利取り前に株価が大きく上がることがあります。
このような銘柄は、権利取りの直後に株価が大きく下がることが多いです。年1回だけの人気の優待を取るためには、権利取りの1~2カ月くらい前、優待取りの買いが入る前に投資したほうが良いと言えます。
この投資法では、夕凪さんという方が最も有名です。
高配当株に投資する場合も同じです。
権利取り直前に買うと買ってすぐに配当金が得られるので得をしたように感じますが、実際には、権利落ち後に得られる配当金以上に株価が下がって損をすることもあります。
まとめ
優待投資は、初心者にとって手軽にスタートしやすい投資です。
ですが、優待を取ることだけが目標となり、より大きな利益を手にするという投資の本来の目標を見失わないようにしましょう。
また、優待の魅力に気を取られ財務内容や企業業績をよく調べないまま株を買うことも避けましょう。このような銘柄は、株主優待制度の改悪・廃止する可能性が考えられ、株価の大幅下落に巻き込まれる場合も。
株式投資である以上は、優待狙いで投資する場合でも、業績が悪化している企業や不祥事を起こしている企業は避けるようにしましょう。