四季報活用記事第2弾です。
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リーマンショックのような経済危機が起きたり、不祥事により業績が一時的に悪化したりするといった有事の際にも、手元資金が豊富で会社の資金繰りが行き詰まる恐れがあります。
その可能性が低いと考えられる企業の見極め方の一つに「ネットキャッシュ」を確認することがあります。
今回の記事では、四季報を用いてネットキャッシュを計算する方法について解説します。
1.ネットキャッシュとは?
企業の手元流動性(現金+有価証券)から有利子負債を差し引いた金額で、キャッシュリッチの度合いを示すもの。また、時価総額をネットキャッシュで割ったネットキャッシュ倍率が小さいほど、蓄えた現金や預金が有効に活用されていない企業として、M&Aなど企業買収の候補になりやすい。
ネットキャッシュの計算式は、次の通りです。
ネットキャッシュ=現金同等物-有利子負債
簡単に言うと、“企業の持っている現金またはそれに類するものから、借金を差し引いたもの”がネットキャッシュです。
2.ネットキャッシュが多いことの魅力とは
ネットキャッシュが豊富な企業は、新規事業への設備投資や配当などに回せる余裕資金があることから、投資の対象として魅力があります。
また、企業が保有する資産の中で最も流動性が高いため、M&Aをする企業にとっては大きな魅力となります。
実際に、買収が行われると買収される企業の株価が上がりますので、投資家にとっても、大きなメリットであると言えます。
また近年は、現金を多く持っているのにそれを有効活用していない企業の株式を買い、株主としてその企業に圧力をかける投資家(アクティビスト)も増えています。
彼らの主張で、増配などの株主還元策を強化するよう圧力をかけられている企業も増えています。
3.会社四季報を活用してネットキャッシュを確認!
先程の説明の通り、ネットキャッシュは現金同等物から有利子負債を差し引いたものを差します。
次の画像は、会社四季報2018年3集 夏号です。
[5440]共英製鋼を例に挙げて解説します。
[5440]共英製鋼 四季報
※出典:会社四季報2018年3集 夏号
まず、有利子負債は、【財務】の欄の有利子負債の項目で確認することができます。
続いて、現金同等物は、【キャッシュフロー】の欄の現金同等物の項目で確認することができます。
計算時、それぞれ金額単位が“百万円”、“億円”と異なっているので、計算をするときは注意しましょう。
四季報より、[5440]共英製鋼は、現金同等物が292億円、有利子負債が495億円ですので、差し引きすると約203億円有利子負債の方が多いことがわかります。
⇒共英製鋼は、有利子負債が上回っていてネットキャッシュはない。
まとめ
ネットキャッシュは以下の式で算出でき、四季報の情報から簡単に算出が可能!
「ネットキャッシュ=現金同等物-有利子負債」
また、ネットキャッシュの多い企業は、M&Aによる株価の値上がりや、アクティビティスト(物言う株主)からの圧力によって増配等に踏み切る可能性もあり、個人投資家にとって魅力的!
解説の通り、ネットキャッシュは会社四季報を用いることで簡単に算出することができます。
中長期で保有を投資を検討している銘柄のネットキャッシュは一度確認してみましょう。
長期ホルダーという個人的理由で共英製鋼を例示しましたが、どうせならネットキャッシュありの企業で説明した方が良かったかな…