投資をする上で、PER、PBR、ROEなどの指標を活用する方が多いと思います。
中でも、ROEやROAはその企業の資産に対する収益性を表す指標で、いわば企業の稼ぐ力を見極めることができます。
これらは投資家向けの指標ですが、企業・経営者向けの指標の位置づけで、「ROIC」という指標が存在します。
ROICとは、Return On Invested Capitalの略称で、企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す指標。
計算式は、一般的には以下の通りです。
ROIC={営業利益×(1−法人実効税率)}÷(株主資本+有利子負債)
※営業利益×(1−実効税率) ⇒税引き後営業利益のこと
この式は簡単に言うと、“利益÷使ったお金”です。
※この計算における“使ったお金”には、支出したお金(コスト)と、金庫の中に眠る使っていないお金(資産)の両方が含まれています。
見ての通り、PERとかと違って計算式がややこしいです。
「ROIC」は指標の中では上級に位置付けられますが、図解で解説しますのでついてきてくださいね。
なんだか難しそうね。ところで、ROICって本当に重要なの?(笑)
あんまり聞かないし、ROEとROAを知っていれば十分かなぁと思って…
それではまず初めに、ROICを理解しておきたい理由を説明します。
1.「ROIC」を理解する意義とは
東証上場企業の2018年3月期は決算短信集計における平均ROEは10.25%に達しました。
ROEは、株主資本の薄い(過小資本)企業ほど、財務レバレッジを効かせる、すなわち負債により、その数値を高められます。
計算上、以下のような企業はROEが高くなります。
- 株主資本比率が低くて純資産の小さい過小資本の企業
- 負債で事業資金を調達している企業
極端な例ですが、赤字続きで純資産が大幅に減って債務超過寸前に追い込まれている企業でも、目先でそれなりの利益を出せばROEが高水準に達してしまいます。
こうしたROEの矛盾を見抜くためには、負債も含めて事業に投じた資金がどれだけの利益を生み出すのかという、真の稼ぐ力に着目する必要があります。
→ROEだけでは不十分!さらに別の視点から考察することも大切に。
それを計るのが、「ROIC」なのです。
2.「ROE」と「ROIC」 違いは?
「ROE」と「ROIC」はどちらも投資利益率を表している指標という点で似ています。
ですが、これらの2指標には以下のように大きく2つの違いがあります。
- 借入金を含めるか含めないかの違い
- 投資家目線か経営者目線かの違い
これはいったいどういうことか。
ROE・ROA・ROICの違いを次の通り図解しました。
ROICは純資産(株主資本)と借入金などの有利子負債を含めて、どれくらいの利益を生み出したかを測る指標です。
一方で、ROEは純資産、すなわち株主資本を使ってどれくらいの利益を生み出したかを測る指標で、負債は除いて計算しています。
ROICの計算には税引き後営業利益、ROEとROAには純利益を使うんだね。
これには何か理由ってあるの?
借金によるレバレッジで本業の利益を最大にするために算出するのがROICなので、税引き後営業利益を使います。
一方、投資家にとっては、営業利益より最終利益を重視するので、ROEは当期純利益で計算するんですよ。
ROICは経営者向け、ROEは投資家向けの指標ってのはそういうことだったのね!
3.まとめ
ROEは、株主資本を使ってどれだけの利益を生み出せるかを測る指標。
⇒この時の利益は、当期純利益を用いるので、投資家向けの指標といえる
対してROICは、株主資本と有利子負債を使ってどれだけの利益を生み出せるかを測る指標。
⇒この時の利益は、税引き後営業利益を用いるので経営者向け指標といえる
借入金等で事業資金を調達している会社は、高ROEとなってしまうので、ROICと合わせて指標を活用することで真の高収益企業が見つかる!
ROICは、計算が煩雑な上、計算方式も複数あるため、正しく算出することは困難ですが、企業の株主向け資料やGMOクリック証券のツールから確認することができます。
オムロン、川崎重工、アサヒグループHDなどの業界最大手企業は、ROICを意識した経営を掲げており、今後、広く浸透していくことでしょう。
投資家としてROEだけでなく、ROICも理解することで、隠れ高収益企業が発見できたり会社経営の理解が深まったりするかもしれません。