米国の金融政策における意思決定はFRBで行われています。
米国の中央銀行制度の最高意思決定機関。日本銀行と同様、米国の中央銀行に相当する機関で、米国の金融政策やFFレートの金利誘導目標を決定している。
FRBが、非常に注目している指標が3つあります。
1.「非農業部門の雇用 増減数」
まず一つ目は、雇用の増加減少量を表す「非農業部門の雇用 増減数」です。時期によって、多少の変動はありますが、月20万人以上増加していれば、経済は好調であると判断できます。
現在のFRBの議長はジャネット・イエレン氏で、ケインズ派です。ケインズ派は雇用を重視しますが、2017年後半に時点では失業率が4%台前半と、米国にしては非常に低く、非農業部門の雇用数が20万人以上増える月も安定してあるため、経済は比較的好調と判断し、徐々に時間をかけて利上げを進めています。
2.「時間あたり賃金 前月比」
イエレン議長の発言には、「雇用の質」というフレーズが多く登場します。
これを表すのが、「時間あたり賃金 前月比」です。この数値がプラスということは、それだけ賃金が上がっていることを示しています。
日本においても、非正規雇用など、賃金が比較的低い雇用の増加が問題になっていますが、これは雇用の質が悪いととらえられ、逆に賃金が上昇しながら雇用が増えることが、「雇用の質が良い」ということになります。
3.「消費者物価 前年比」
もう一つ、FRBが重視している指標が「消費者物価 前年比」の上昇率です。
賃金の上昇よりも物価の上昇が高くなると、当然ながら実質賃金は下がります。
米国の物価目標も、日本と同じ2%です。違うのは、2%には程遠い日本に対して米国は2%という目標をほとんど実現している点です。
1~3の指標の数値推移
非農業部門の雇用 (増減数、万人) |
時間あたり賃金 (前月比、%) |
消費者物価 (前年比、%) |
|
2017年1月 | 22.7 | 0.2% | 2.5% |
2月 | 23.5 | ▲0.1% | 2.7% |
3月 | 9.8 | 0.2% | 2.4% |
4月 | 21.1 | 0.2% | 2.2% |
5月 | 13.8 | 0.1% | 1.9% |
6月 | 22.2 | 0.2% | 1.6% |
7月 | 20.9 | 0.3% | 1.7% |
8月 | 15.6 | 0.1% | 1.9% |
9月 | ▲3.3 | 0.5% | 2.2% |
10月 | 26.1 | 0.0% | 2.0% |
※出典:米国・労働省
2017年9月は-3.3万人と大きく落ち込んでいますが、これは8月下旬から9月上旬にかけて米南部を襲った大型ハリケーンの影響と考えられます。翌月10月には、約26万人増加と回復しています。
消費者物価に関して、上記の期間より以前は
2014年…1.6%
2015年…0.1%
2016年…1.3%
となっているので、米国における物価上昇率は目標通りと言えます。
また、中央銀行の使命は、インフレを抑制しながら失業を減らすことですが、指標を見る限り使命は果たされていると評価できます。
まとめ
イエレン氏の後任として、トランプ大統領が次期FRBの議長に指名したのはジェローム・パウエル氏です。
パウエル氏は、イエレン氏の穏健な低金利政策を継承すると見られています。
今後のFRBの動向には注目です。